Just happy days





鳥の囀る声が耳に届く。
それと同時に朝の日差しを顔に浴びて、ハイデリヒは眼を覚ました。

昨日は朝から夜まで雨模様で湿っぽかったが、今日はそれと裏腹。
ハイデリヒの身体の調子も良好で、最高の休日といった感じだ。

ベッドに入ったまま、何をして過ごそうか、と考えている時だった。
いきなり部屋のドアが開かれて、彼の恋人が慌ただしく飛び込んできた。

「アルフォンス!」

ハイデリヒの同居人、エドワードだ。
年のわりに小柄な身体。
だが、とても頼りになるし、優しいし、これ以上ないというくらい最高のひと。

「あ、わり。今起きたばっかりか?」

「いや、大丈夫だよ。・・・どうかした?」

ベッドから起き上がりながら、相手の顔に眼をやる。
普段はハイデリヒより遅く起きるエドワードが、すでに私服に着替えているのだ。
同居生活を初めてから暫く経つが、今までそんなことは一度もなかった。
ちょっとくらい不思議に思うのも当然だ。

「あれ? お前、知らねぇの?」

彼は、ニヤニヤ笑いながらハイデリヒの横に座った。
ハイデリヒの返答を楽しみにしているようだ。

しかし、当のハイデリヒはというと、思い当たる節がない様子。

「何だよ。今日は記念日だろ、記念日!」

「え?」

記念日? 今日は誰かの誕生日だったかな? それとも、お祭り?

そう思いながら、顎に手を当てて考え込んだ。

「・・・酷ぇなぁ・・・オレとアルフォンスの大切な日だろ?」

そう言われると、更に首を傾げてしまう。
記念になるような日が今までにあっただろうか。
あったのかも知れないが、ハイデリヒは思い出せない。

「・・・ファーストキスをした日?」

おもむろにポツリと呟くハイデリヒ。
エドワードはそんな相手の顔を見て、思わず笑ってしまった。

「お前、照れてんのかよ?」

「そ、そんな事ないッ!」

からかうような笑みを浮かべながら、エドワードは立ち上がった。

「今日は、オレ達が同居生活を初めてから1年目。
・・・つまり、同居記念日!」

楽しそうに笑うその人の姿は、ハイデリヒより年上とは思えない。
その表情を見るとこっちまでもが笑顔になってしまうのは、毎日のことだ。

「ってことで、今日はオレがお前に料理を作ってやる!」

「・・・?」

エドワードは胸を貼り、ベッドにちょこんと座っているハイデリヒを見下ろした。

ハイデリヒの顔には、思いっきり『?』が書かれている。

「だから、今日はオレが料理作るの! 日頃のお礼だ」

親指を立て、またニッコリ笑ってみせるエドワード。
かなりはりきっているのが、声からでも顔からでも分かった。
それでも、やっぱり遠慮してしまうのがハイデリヒの性格。

「何言ってるの? 僕の方がお世話になってるのに・・・」

貴方のお陰で、僕の研究は順調に進んでいるのに。
そう心の中で想いながらも、ハイデリヒの表情は嬉しそうだった。

口でどれだけ言っても、本心は顔に出るんだな。
なんて言葉を、エドワードは言いたいのではないか。

そのエドワードはというと、遠慮するなよ、といったように苦笑して。

「普段食事は誰が作ってる?」

サラリ、と有無を言わせないような口調でハイデリヒを見つめる。

ハイデリヒはその眼に弱かった。

穏やかなのに、とても強くて鋭いその金の瞳。

「・・・本当に良いの?」

静かにそう言うハイデリヒに、エドワードは再度胸を貼ってみせた。

「もちろんだろ! お前は自分がやりたいことをやってろよ」

一言そう付け加えると、そそくさとエドワードはその場から立ち去った。

部屋に残されたハイデリヒは、相変わらずだなぁ、という表情。

「エドワードさんの手料理、か」

楽しみだ。 食べてみたい。 そんな類の言葉全てが浮んだ。

小さく伸びをした後、私服に着替えようとベッドから立ち上がった時だった。

バタン、という音と共に再びエドワードが走り込んでくる。

「アルフォンス!重要なことを忘れてた・・・」

「?」

声を出さずに表情を変えたハイデリヒに、エドワードは軽く笑う。
子供っぽい、無邪気な笑いだ。

「材料がない。 から、一緒に買いに行こうぜ?」

ハイデリヒは思わず呆れ顔になってしまった後、エドワードをじっと見る。

彼は返事をするかわりに、相手と同じ表情をしながら小さく頷いた。





「何を作ってくれるの?」
「そんなのお楽しみに決まってるだろ?」

普段あまり見せないエドワードの楽しそうな笑顔。
その笑顔を、今日だけで何回見ただろうか。

「まぁ、お前がリクエストするならそれ作るぜ?」

料理を作ってるエドワードの姿は見たことはない。
が、それでも彼が頼もしく見えた。

「エドワードさんが得意なもので良いよ」
「オレが得意なもの?」

エドワードは相手の言葉に暫く考え込んだ。
得意なもの、と言われるとまた困る。

「・・・それなりのもんは作ってやるよ」

『それなり』のもの。
それでも十分ハイデリヒには嬉しかった。

第一、エドワードが『同居記念日だ!』なんて言い出した時から
今までずっと、なぜか心が暖かい。

「ところでさぁ、昨日アルフォンスが描いてたロケットの構造図だけど・・・」
「うん?」
「もうちょっと大気圧に耐えられるように、右翼部分をさ」
「それも考えたけど、そうすると発射時の負担が・・・」

なにも考えずにする、普段の会話。
それこそが最高の幸せだなんて、今まで感じたことがあっただろうか。

今日になって、やっと分かったのかも知れない。
2人で何でもないことを話して ただお互いを見て。

そんな当たり前のことなのに、どうしてこんなにも――

「・・・あ、見ろよアルフォンス」

ふとエドワードが道の片隅を指差した。

そこには、ただ1人でポツンと立っている1つの緑。

「珍しいな。四つ葉じゃねぇか」

エドワードはその緑に駆け寄ると、ハイデリヒを手招いた。

ハイデリヒが覗き込んだそこには、小さな小さなクローバーが1本。

4枚の葉が並んだ、シンプルでありながらとても綺麗なそれ。

「幸せの印・・・だね」

ハイデリヒは呟くと、そのクローバーを人差し指で優しく撫でた。
そのクローバーもまた、暖かく感じる。

「今日は何か良いことがありそうだな♪」

エドワードは立ち上がると同時に、青空を見上げた。
さて、何を作ってやろうか、なんてことを考えているような表情だ。

「・・・エドワードさん。僕、シチューが食べたいな」

横に立つエドワードと道端に咲くクローバーを交互に見ながら、ハイデリヒは呟いた。

ここでこんな言葉が出てきた理由なんか、分からなかった。
ただ、何となくそう思っただけだ。

「あ? 何だよいきなり。もちろんオッケーだぜ!」

青い空から碧い瞳へと視線を移し、軽く笑うと同時に少し首を傾げる。

「でも何でシチューなんだ?」

「何か・・・エドワードさんが好きなものを食べたくなったから」

多分、こんな理由だろうと思った。
大好きな彼と同じ美味しさを味わいたいから。
恋人が大好きなものを、一緒に食べたいから・・・かな?

よく分からないけど、とにかくそんな気分だった。

「ったく、お前って本当に可愛いなぁ・・・」

溜息が混ざった声でそう苦笑すると、彼はそっとハイデリヒの手を取った。

「よし、今日は幸せ記念日だ! アルフォンス、飲むぞ!」

「全く、エドワードさんは毎日のように飲んでるでしょ?」

呆れ顔で付いて行くハイデリヒは、後ろをそっと振り返った。

あんな小さなものでも、一生懸命綺麗に生きている。
今の僕も、あんなクローバーみたいだったらな・・・

「今日だけじゃなくて・・・」

風のように小さい声で言ったその言葉は・・・・・・




『昨日も、明日も、ずっとずっと』

『僕にとっては毎日が、幸せな記念日だよ・・・』




・・・エドワードに届いたのか、届かなかったのか。









〜END〜









::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

少し短めですが(コラ)「ハイデリヒ幸せ後援会」様に捧げさせて頂きました。

とにかくハイデたんを幸せにするために頑張って書いたことが伝われば幸いです(笑)
自分で書いておきながら意味不明な部分もあるのですがスルーしてやってください;
あぁ〜相変わらず未熟な小説って感じ漂ってます・・・。

2005.10.04 UP!

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

Photo by NOION


黐紅様ありがとうございました!!
幸せ滲み出てますよ・・・!!
エドワードさんの幸せ者ー!!!vv畜生エドワードになりたい・・・!!(おいおい)

アップするのが遅くなってしまいすみませんでした!;;
投稿有難う御座いました!!v

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送